横尾忠則の芸術と人生を紐解く旅:戦争、死、そして自由への探求?横尾忠則:生い立ちから最新展覧会まで、その多面的な表現世界
グラフィックデザイン界の巨星、横尾忠則。戦争体験、死への意識を経て、独自の表現を追求し続ける87歳。 新作「寒山百得」は、多様な様式が混ざり合い、自由な発想で描かれた唯一無二の世界。常に変化し続ける画風、死を恐れず、今を生きるメッセージが込められた圧巻の個展。 彼の創作の軌跡と、揺るぎない生命力に触れる、必見の展示です。
💡 横尾忠則の戦争体験が、その後の作品に大きな影響を与えていることが分かります。
💡 2023年に開催された『横尾忠則 寒山百得』展では、最新作を通して独自の解釈が示されました。
💡 横尾忠則氏の老齢と死への向き合い方は、私たちに生き方へのヒントを与えてくれます。
それでは、まず横尾忠則さんの生い立ちや戦争体験が、どのようにその後の作品に影響を与えたのかを見ていきましょう。
横尾忠則の生い立ちと戦争体験
横尾忠則氏に最も大きな影響を与えた出来事は何ですか?
戦争体験
横尾忠則の幼少期から戦争体験、そして死への意識が芽生えた過程を解説していきます。

✅ 横尾忠則さんは、戦争を想起させるモチーフを繰り返し用いるなど、死をにおわせる作品を多く描いてきた。それは、自身の戦争体験が創作に大きな影響を与えているためである。
✅ 横尾さんは5歳の時に太平洋戦争が始まり、戦争の日常を経験した。特に、神戸や明石の空が真っ赤に染まった光景や、グラマン戦闘機が学校の上空を飛んだ時の恐怖は、作品に大きく反映されている。
✅ 横尾さんは、戦争体験が意識的にではなく、身体の記憶として作品に現れると語る。例えば、赤い絵画シリーズは、空襲で焼夷弾が飛び散る光景を彷彿とさせる。
さらに読む ⇒東京新聞出典/画像元: https://www.tokyo-np.co.jp/article/351059戦争体験が、横尾さんの作品に色濃く反映されていることが印象的ですね。
特に赤い絵画シリーズは、強烈なイメージです。
横尾忠則氏は、1936年に兵庫県で生まれ、自然豊かな環境で、信仰深い養父母のもとで育ちました。
しかし、戦争体験や高齢の養父母の死という恐怖と向き合い、死に対する強い意識を抱くようになりました。
特に、終戦間際の小学校時代、グラマン戦闘機が校庭に降下してきた体験は、横尾にとって死を意識した瞬間であり、戦争という社会的な出来事と個人的な「死」が結びついた出来事として、彼の記憶に深く刻み込まれました。
横尾は、恐怖を感じながらも、サーチライトの美しさや廃墟の風景に生を感じ取るなど、常に物事を両面から見ています。
これは、彼の養父母が亡くなるかもしれないという恐怖と、彼らを愛していたという感情を同時に抱いていた経験から生まれているのかもしれません。
子供の頃から絵を描くことが好きでしたが、模写が中心で、自分の発想で何かを生み出そうとは考えていませんでした。
しかし、高校時代に東京から来た絵画教師の影響で油絵を始め、画家への道を歩むようになります。
横尾さんって、戦争のコトを小さい頃からそんなに意識してたんだね。なんか、すごい。
横尾忠則の芸術活動と「寒山百得」
横尾忠則の新作「寒山百得」は何をモチーフにしている?
寒山と拾得
横尾忠則の多岐にわたる芸術活動。
特に2023年の『寒山百得』展について詳しく見ていきます。
公開日:2023/11/12

✅ 「横尾忠則 寒山百得」展は、東京国立博物館 表慶館で2023年9月12日から12月3日まで開催される、87歳の横尾忠則氏が約1年半で制作した100点を超える新作による展覧会です。
✅ 唐の時代の伝説的な2人の詩僧、寒山と拾得をモチーフに、巻物や箒といった伝統的なイメージをトイレットペーパーや掃除機などに置き換えるなど、現代的な解釈で再構成されています。
✅ 本展は、東京国立博物館で初めて開催される現存作家の個展であり、横尾忠則氏が「拾」を「百」に改め、病を乗り越えて102点の作品を完成させたこと、そして「寒山拾得」を独自の解釈で表現した点で歴史的な意義を持つ展覧会です。
さらに読む ⇒美術展ナビ出典/画像元: https://artexhibition.jp/topics/news/20230912-AEJ1582234/なるほど、寒山と拾得を現代的に解釈するって面白いですね!トイレットペーパーとか掃除機とか、斬新です。
横尾忠則は、1950年代よりグラフィックデザイナーとして活動を始め、舞台芸術のポスターなどで国内外で高く評価されています。
8年後、MoMAでピカソの展覧会を観て衝撃を受け、「画家宣言」を表明し、以降具象画を中心とした作品を発表し続けています。
87歳を迎えたいまもなお、旺盛な創作意欲を絶やすことなく、アトリエに籠り制作に没頭しています。
今回の東京国立博物館表慶館での個展では、1年2カ月の間に102点もの新作「寒山百得」を制作しました。
「寒山百得」は、中国・唐時代の2人の詩僧、寒山と拾得をモチーフにしたシリーズで、それぞれの日の気持ちにしたがって、すべて異なるスタイルで描かれています。
横尾は、100点と考えると手足がすくんでしまうため、言葉や概念を排除し、肉体だけでアスリートのように描いたと語っています。
寒山と拾得は、世俗を超越した奇行ぶりで知られており、横尾にとって彼らは、好き放題、勝手気ままな生き方の象徴であり、自身の内面にも存在すると考えています。
今回の作品群は、それぞれの作品がまったく異なる多種多様な造形と画風を持っており、「寒山拾得図」を再構築しています。
例えば、寒山と拾得がシルクハットとマントを身につけ、魔術師のように描かれたり、ロボットのように描かれたり、マネの名作《草上の昼食》を思わせる構図で描かれたりしています。
独自の解釈と連想の赴くままに描かれたこれらの作品群は、バロック様式やシュールレアリスムなど、さまざまな様式が混ざり合った横尾忠則らしい作風と言えるでしょう。
横尾さん、87歳にしてあの創作意欲はホンマにすごいわ。わてなんか、もうネタも尽きてきたっちゅうのに。
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常に変化し続ける画家、横尾忠則。死を意識しながらも、絵画への情熱は衰えず。夢や日常を通して、自由な表現を追求する姿を描く。